たんぱく質が肥満の方を救う

2019/01/16

こんにちは、横山です。

フィットネスブームにより10年前に比べて、たんぱく質の重要性がうたわれるようになり、コンビニにもたんぱく質が豊富な食べ物や、プロテインドリンク、プロテインバーなるものが増えてきました。

 

とは言っても、今でもラーメン&チャーハン、お好み焼きをおかずにご飯、みたいなほぼ炭水化物で構成されるような食事を毎食食べる方も多いと思います。

 

そんな方でさえ、たんぱく質を食事に取り入れようかと思うような記事を書いてみました。

 

興味ある方はぜひ。

(※本記事をもってLAMUDAでの投稿は最後とさせていただきます。今後は違う媒体等を利用して何かしら発信できたらと思っています。楽しみに読んでいただいた方々に深く感謝申し上げます。)

 

 

今日は、2005年にシンプソンとラウベンハイマーによって提唱されたタンパク影響仮説(Protein Leverage Hypothesis)(※訳し方はこれで合っているかは不明です。)について紹介します。

これはタンパク質の必要量を満たすまで、食事量が自然と増えていくという考え方です。(※1)

 

簡単に説明すると、ヒトにとって必要なのは何といってもタンパク質であって、狩猟採集時代においても必要最低量のタンパク質を確保・摂取するまでは、狩猟採集とそれを食べることを止めるわけにいかず、それがDNAに刻み込まれたままなのかもしれないという仮説です。

虫や鶏、ラット、マウス、猿などでもこれは確かめられていて、炭水化物や脂肪に比べてタンパク質は総摂取カロリーとの関連が強いことが分かっています。(※2, ※3, ※4, ※5)

 

 

ヒトでもこれは確かめられつつあり、肥満者でも体脂肪の少ない人でも同じように、タンパク質摂取の割合が多いほど自然と食欲が低下し、総摂取カロリーが少なくなることが分かってきています。(※6, ※7, ※8)

 

 

その作用機序はなにか。

 

 

炭水化物摂取量を一定にして、タンパク質の割合を15%から30%に増やしたところ、中枢神経系におけるレプチン感受性が高まったことがわかりました(※9)

これにより、食欲の抑制が起こっているようです。

 

なお、高タンパク食はDIT反応が高くなるため、消費カロリーが増えて体重減少にもつながります。(※10)

 

 

DIT反応というのは「食事誘発性体熱産生」のことで、食物を摂取するとそれを消化したりエネルギー化したり、肝臓のグリコーゲンが分解されたり、咀嚼が脳を刺激して交感神経が興奮したりすることによりエネルギーが使われ、熱が発生することです。

炭水化物によるDITは5%、脂質によるDITは4%程度ですが、消化吸収・エネルギー化が複雑なため、タンパク質によるDITは30%もあります。

 

ここで気になるのがタンパク質の質です。

 

総カロリーの29%をタンパク質(主に豚肉)にした場合と、総カロリーの28%をタンパク質(主に大豆)にした場合、総カロリーの11%をタンパク質にした場合とで比較した結果、タンパク源を主に豚肉にした群がもっとも消費カロリーが多くなっています。(※11)

 

 

では、牛肉だったらどうでしょうか。

総カロリー(自由に食べさせる)の5%を小麦タンパクとし、追加で10%または25%の牛肉タンパクを追加(トータルで総カロリーにおける15%または30%がタンパク質)した研究があります。(※12)

 

その結果、摂取カロリーは総カロリーの30%がタンパク質の群がもっとも低く、やはり食欲が低下していることが示されています。

動物性タンパクに食欲抑制効果が高いということは、アミノ酸スコアに関係している可能性があります。

 

動物性タンパクはアミノ酸スコアが高いため、それを一定量摂取することで脳は「十分な栄養が摂取されている」と判断し、食事量を減らすのかもしれません。

なお大豆タンパクであっても、多めに摂取することで同じような効果が期待できるようです。

 

 

ここではタウリンがカギを握っているようですが(※13)、同じ目的でしたら含硫アミノ酸を多く含むホエイのほうが有効でしょう。

 

またホエイにはグレリンを減らしたり、満腹ホルモンであるCCKを分泌させたり、満腹シグナルを送るペプチドであるPYYやPPを増やしたりすることにより、食欲を抑制するという効果も期待できます。(※14, ※15)

 

タウリンがカギを握ると書きましたが、その意味では魚のタンパク質が効果を発揮しそうです。 120名の肥満男女を対象に魚タンパクのペプチド製品を摂取させたところ、体重とBMI、体脂肪量、ウェストや大腿、ヒップの周径が減少するとともに、CCKとGLP-1が増加しました。(※16)

 

この研究では緩い減量食(通常のマイナス300kcal)を継続してもらい、比較対象群はホエイプロテインを摂取しています。 ホエイや魚を主にし、プラスで肉類を食べてタンパク質の摂取カロリーをトータルの30%くらいにするだけで、普通の人は食事量が減り、DITも増えてダイエットできるはずです。

 

 

これぞ「楽して痩せる方法」ではないでしょうか。

 

 

 

※1: Obesity: the protein leverage hypothesis. Obes Rev. 2005 May;6(2):133-42.

※2: Integrative models of nutrient balancing: application to insects and vertebrates. Nutr Res Rev. 1997 Jan;10(1):151-79. doi: 10.1079/NRR19970009.

※3: Growth and food intake responses to diets of different protein contents and a choice between diets containing two concentrations of protein in broiler and layer strains of chicken. Br Poult Sci. 1993 Dec;34(5):959-70.

※4: Geometric analysis of macronutrient selection in the rat. Appetite. 1997 Jun;28(3):201-13.

※5: Protein content of diets dictates the daily energy intake of a free-ranging primate Behav Ecol (2009) 20 (4): 685-690.

※6: Protein leverage and energy intake. Obes Rev. 2014 Mar;15(3):183-91. doi: 10.1111/obr.12131. Epub 2013 Oct 28.

※7: Testing protein leverage in lean humans: a randomised controlled experimental study. PLoS One. 2011;6(10):e25929. doi: 10.1371/journal.pone.0025929. Epub 2011 Oct 12.

※8: Protein leverage affects energy intake of high-protein diets in humans. Am J Clin Nutr. 2013 Jan;97(1):86-93. doi: 10.3945/ajcn.112.046540. Epub 2012 Dec 5.

※9: A high-protein diet induces sustained reductions in appetite, ad libitum caloric intake, and body weight despite compensatory changes in diurnal plasma leptin and ghrelin concentrations. Am J Clin Nutr. 2005 Jul;82(1):41-8.

※10: The effects of high protein diets on thermogenesis, satiety and weight loss: a critical review. J Am Coll Nutr. 2004 Oct;23(5):373-85.

※11: Effect of fat-reduced diets on 24-h energy expenditure: comparisons between animal protein, vegetable protein, and carbohydrate. Am J Clin Nutr. 2000 Nov;72(5):1135-41.

※12: Protein leverage effects of beef protein on energy intake in humans. Am J Clin Nutr. 2014 Jun;99(6):1397-406. doi: 10.3945/ajcn.113.078774. Epub 2014 Apr 23.

※13: Effects of high and normal soyprotein breakfasts on satiety and subsequent energy intake, including amino acid and ‘satiety’ hormone responses. Eur J Nutr. 2009 Mar;48(2):92-100. doi: 10.1007/s00394-008-0767-y. Epub 2009 Jan 13.

※14: Dietary whey protein influences plasma satiety-related hormones and plasma amino acids in normal-weight adult women. Eur J Clin Nutr. 2015 Feb;69(2):179-86. doi: 10.1038/ejcn.2014.266. Epub 2015 Jan 7.

※15: Whey proteins in the regulation of food intake and satiety. J Am Coll Nutr. 2007 Dec;26(6):704S-12S.

※16: Supplementation with a fish protein hydrolysate (Micromesistius poutassou): effects on body weight, body composition, and CCK/GLP-1 secretion. Food Nutr Res. 2016 Jan 29;60:29857. doi: 10.3402/fnr.v60.29857. eCollection 2016.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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